第十二日目。
《青》と写真家は、これまで訪れた場所を巡り、最後の約束のリハーサルをする。
約束といっても一方的に日時と場所を知らせただけだから、ボトルに詰めて海に流した手紙のようなもので、本当に届いたのかどうかは、わからない。が、来てくれることを信じる。
《青》は、午後6時までに届く11月3日発行の市民新聞を丹念に読む。
おなじみの読者投稿欄には「青の滞在記」が掲載されている。
そして新聞に折込まれた《青》の写真には、待ち合わせの日時と場所が記されている。これが彼女の、瓶詰めの手紙。
午後6時55分、FMラジオで青の手紙が繰り返される。
それはユキコさんへの手紙だが、これまでM市で出会った人たちと、週末に会う約束をした人たち全員への手紙でもある。