10月23日(月)

第一日目。

午後4時1分着の特急で、《青》が駅に到着する。
彼女は大きなトランクと、これから会う人へのささやかな手土産を携えている。

午後2時2分着の、タンゴディスカバリーには乗れなかった。

駅の北側で写真家が運転する車に乗り込み、港へ向かう。

午後5時30分、「森」という地域の、神社の参道に立つ一軒家に荷物を運びこむ。
ここが今日から、彼らふたりの仮住まいとなる。

この家にはかつて家族が暮らしていた。
息子が生まれ、父が亡くなった。
もっと昔は、うどん屋さんだったこともある。
ふたりは古びた木の雨戸をゴトゴトと音を立てて開け、畳の部屋に風を通す。

午後6時55分、FMラジオ局で青の手紙が読まれる。
放送はFM77.5MHzと、インターネットでも聴くことができる。

午後8時すぎ、近所にある「トマト&オニオン 創業店」で夕食をとる。
隣のテーブルの若者たちの会話に耳を澄ませるが、M市のうわさは聞こえてこない。