第七日目。
安息日。
台風が近づいている。
天候や交通に注意して、安全第一で過ごす。
鑑賞者は上演に足を運ぶのはやめ、たった今、M市で行われている演劇を想像する。
午前9時、写真家は西のカトリック教会でミサに参列する。
入口で当日の「上演台本」を受け取り、聖餅を一枚、器に移す。
祈りの歌に耳を傾け、ステンドグラスの光を眺める。
その後、車でM市のいろいろな場所を巡る。
その中には先週《青》と一緒に訪れた場所もあるし、今日初めて訪れた場所もある。
誰かがふいにいなくなると、私たちは風景の中にその人の「不在」を見つける。
まちですれ違う人々の顔に、その人の面影を見てしまう。
そんなことは、よくある。
午後2時30分、写真家は舞鶴市総合文化会館大ホールを訪れる。
しばらく劇場前で待ってみるが、《青》は現れない。
午後3時、長崎を舞台にした演劇『坂の上の家』が開演する。
午後9時52分、FMラジオで青の手紙が読まれる。
写真家は《青》の声に耳を澄ませ、自分の帰る場所について思いを巡らせる。
夜、写真家は玄関の鍵をあけたままベッドに入る。
が思い直し、やっぱり鍵をかけて眠る。
暗転。