第四日目。
午前8時半、《青》たちの滞在先までキヌヨさんが自分の車で迎えに来てくれる。
海岸線を東へ走り、県境を越えて、キヌヨさんが暮らすTという地域へ向かう。
山道の途中で、蔦の絡まる小学校跡を見かけるかもしれない。
キヌヨさんはM市からTへお嫁に行った人だ。
《青》たちはキヌヨさんの家の菩提寺の中山寺に連れて行ってもらう。
彼女の三人の子どもたちは、皆このお寺の境内を遊び場にして育った。
このお寺は「北陸三十三ヶ所 観音霊場」の第一番のお寺で、馬頭観音を祀っている。ただし御本尊は秘仏で、33年に一度しか開帳されない。
ご住職によれば、馬頭観音は、海の向こうからやってきた騎馬民族がもたらしたもので、海上交通の守り神だったかもしれない、という。
《青》たちとキヌヨさんは、中山寺の境内から海を眺める。
黒毛の馬のことを「青馬」という。
山上から、海の道行きを見守る馬。
キヌヨさんの自宅にお邪魔して、立派な大黒柱を見せてもらう。
《青》は古い古い神棚の暗がりに大黒様とお稲荷さんを見つけ、その面立ちに目を凝らす。
午後4時、東の駅前にあるスーパー「らぽーる」のマクドナルドで、お喋りをする高校生たちを眺める。
今日、出会った顔の中に、彼女の探している面影は見つかっただろうか?
午後6時55分、FMラジオで青の手紙が繰り返される。
その手紙はインターネットで、遠くの街に住む人たちにも届けられる。